VOL.173 [デーリィマン誌 2014年11月号]
北海道を代表する酪農地帯、根室管内別海町にある菊地牧場を訪問した。牧場は菊地正明さん(31)、恵美さん(33)夫婦が平成22年、公社営農場リース事業により離農跡地に新規就農して始まった。正明さんはオホーツク管内遠軽町の酪農家の二男として生まれた。実家は現在、兄が継いでいるが、小さい時から牛舎作業を手伝ってきた正明さんも、「将来は酪農経営者になりたしりと夢を抱いていた。高校から道立農業大学校(十勝管内本別町)に進学、卒業後は(一社)ジェネティクス北海道に就職するが平成20年に退職し、いよいよ新規就農を目指すことに。
恵美さんは大阪市の出身。大の動物好きで帯広畜産大学別科から根室管内初の女性人工授精師としてJA中春別に就職した。恵美さんもまた将来、酪農家になることが夢だった。
共通の夢が縁で21 年に結婚。二人は夢を実現するため別海町上春別の備)アイファームで、研修した後、(有)別海町酪農研修牧場で1年間の実習を経て現在地に入植し念願の独立を果たした。
現在の経営規模は耕地面積80ヘクタール(うち借地15、全て採草地)、総飼養数120頭(うち経産牛90)。1頭当たり年間乳量9,500キロ、乳脂率3.8%、無脂固形分率8.7%で、年間生乳出荷量は790トン(平成25年)。
新規就農の場合、負債圧を抑える目的でつなぎ飼いから始めるのが一般的だが、正明さんはフリーストール飼養を選択した。「つなぎ飼いより施設投資負担は大きいが、フリーパーンで群管理したアイファームで、の経験があったので、初めからフリーストール飼養を選択した」と正明さん。
一方で牧草の収穫・調製作業をコントラクターに委託し、収穫機を保有しないなど経費を抑える配慮も。「自給飼料生産を初めから業者に委託するのに不安はなかったか」と尋ねると、「委託といっても業者に全てを任せるのではなく、圃場管理は自分の目で確かめた上で、収穫や肥料散布時期などを業者と常に話し合って決めている。納得できるまで言うべきことは言うし、そのためにはコントラ業者を変えることも」ときっぱり。
正明さんの牛飼いとしてのポリシーは「牛の観察」。就農時の乳牛導入に際しでも「観察」は怠らなかった。この時は70頭を導入したが、「道内の乳牛市場を回り、自分の目で確かめて納得のいく牛を購入した」。今も牛の状態を常に把握する努力を怠らない。労働力が二人なら給餌、搾乳、除糞など作業は分担した方が効率的に思えるが、牛に接する時聞をできるだけ多く持ちたい、との思いから常に二人で作業を行っている。
また二人とも人工授精師の資格を持ち、種雄牛の選定、授精も三人で行う。「何かあったら全て自分たちの責任ですからね」と、生まれてくる牛への思いは一層強い。
就農と同時に始めたのがビ、タコーゲンの給与。というのも正明さんの実家では15年以上にわたり給与を続けており、正明さんもその効果を認めていたからだ。他のサプリメントを切り替えることがあってもビタコーゲンだけは替えなかったほど。
新規就農時は何かと費用が掛かるのと午群は初産午がほとんどだから生産乳量はさほど多くはない。経費削減のためにビタコーゲンを適正量の半分以下に抑えて給与したことがあった。ところが夏場に食い込みが落ちて乳量も低下してしまう。その後、適正量(1日1頭当たり150グラム)を与えると夏場の食い込みは増え、牛体に張りが出て毛づやも良くなり牛群の健康状態が回復する。
「今では年聞を通じて採食量は変わらなくなった。ビタコーゲンは適正量を給与することで本当の効果が得られるJ と苦笑しつつ反省する正明さんだ。
ビタコーゲンは搾乳午のほか乾乳牛にも与えている。
牛飼い仲間から「ここの子牛は大きいな」と驚カ通れるほど、生まれてくる子牛のサイズは大きい。また子牛は健康で晴乳、育成時の増体が早く、下痢などの疾病は全く発生しないという。
「普通、胎子が大きいと母牛にかかる負担は大きく、難産などの事故につながる場合も少なくないが、わが家で、はそれが全くない。分娩後、母牛の体調は順調に回復し種止まりも良好で分娩間隔は常に400日以内。スムーズな繁殖はビタコーゲンを乾乳期にも給与していることが大きな要因ではないか」さらに、「ビタコーゲンのおかげで消化器系の事故はほとんどなしリと牛群の健康状態に満足している。
「今後は乾乳牛舎、分娩房、治療施設など乳午菅理の施設の充実を図りたしリと言う正明さんの第一の目標は、さらなる健康な牛群づくり。そのためにはビタコーゲンは欠かすことができないものとなっている。