VOL.174 [全酪新報 2014年3月20日]
(株)セイワ(木本年縷社長)のビタコーゲンは、1959年以来、55年間にわたって全国の酪農家に選ばれ続けている。今号では、ユーザーである熊本県内の3名の酪農家を紹介する。玉名市の(有)上田ファーム・上田武史さん(48歳)はルーメン発酵の安定、山鹿市の牛嶋満紀さん(42歳)は整腸作用による軟便解消、菊池市の(有)植島牧場・植島潤一さん(39歳)はたい肥の発酵促進を実感。そのほかにも、夏場の食い込み減少を防ぐなど、微生物の働きによる効果を高く評価している。
熊本県玉名市の(有)上田ファーム(玉名酪農協所属)は、38年前に熊本県の助成により整備された横島町共栄(現在は玉名市に編入)の畜産団地(50頭規模の牛舎が9戸)に入植した。一帯は海岸まで900メートルの干拓地にあるため、入植当初は塩害で牧草がうまく育たなかったことに加え、購入飼料価格も高かったことから、50頭牛舎がいっぱいになるまで時間がかかった。その後、徐々に規模を拡大。19年前にフリーストール牛舎に移行し、現在は経産牛140頭、総頭数250頭、年間出荷乳量134万キロの大型経営だ。
以前は毎年導入して搾乳牛を確保してきたが、10年ほど前から自家育成が上がってくるようになった。現在はほとんど導入することがない。飼料畑は8.5ヘクタールで、夏はローズグラス、冬はイタリアンを作付けする。
ふん尿処理は、飼料畑への還元が3割ほど。残りの7割は、稲わらとの交換と戻したい肥に利用している。経営主の上田武史さんは「水田農家から喜ばれるけど、必要量を考えるとギリギリ。これ以上、供給先は拡げられない」という状態にある。
4年近く前、上田さんは第4胃変位に悩まされていた。そこで、玉名酪農協に相談したところ、ビタコーゲンを紹介された。「ビタコーゲンを使い始めると、何とかしたいと思っていた消化器系の病気が減少した。たい肥の発酵も良くなった。湯気の出具合を見て、今までとの違いを実感した。菌の働きが良く、分解しているのが分かる。使ってみて納得した」と話す。また、TMRの二次発酵にも悩んでいた。そこで、6年前から飼槽に塩ビパイプを這わせ、そこに穴を開けてミスト状の水を出してTMRに加水し、二次発酵を防いでいる。上田さんは「材料費は5、6万円。園芸農家からヒントを得た。夏は忙しいから、加水するのは手間がかかって大変だった。それに、中途半端に水をかけると、かえって二次発酵が進んでしまう。この方法だとムラなく加水できる。時間を取られないから、長続きしている」と説明する。
その上で「夏場の食い込みが落ちないから、乳量は低下しない。さらに、ビタコーゲンを使ったところ、嗜好性が良くなった。加水プラスビタコーゲンで、乳量と乳成分が安定している。当初ビタコーゲンは消化器系の異常発酵を減らすことが目的だったが、相乗効果として乾物摂取量が増えた」と高く評価している。
飼料添加物に関する考え方について、上田さんは「すぐに効果が出るものではなく、長い目で見て、長期間効果があるものを使うべき。昔から使っている農家が多いというのもポイント。中身が変わらないということ。また、暑くなってきたからといって、夏だけ使っても効果は出ない。1年を通して給与しないと、その効果は分からない」と話した。
熊本県菊池市泗水の(有)植島牧場(JA菊池所属)は、良質なたい肥の評判がさらに評判を呼んで、定期的に25戸の園芸、果樹農家に販売している。販売を始めて7年。植島潤一さん(39歳)は「今ではリピーターが多く、たい肥が足りない状態」と話す。経営規模は、搾乳牛約80頭、育成牛約40頭で、12年度の出荷乳量は871トン。
生産するたい肥のうち、戻したい肥が3割、販売が7割で、たい肥は全てバラで販売している。
今から3年ほど前、潤一さんの父・隆博さん(63歳)は、多発する子牛の下痢に困っていた。そのような時、熊本県酪連が毎月開催する乳牛市場に参加した隆博さんは、セイワの担当者から説明を受け、ビタコーゲン哺育用に興味を持ち使用を開始した。
すると、子牛の下痢は改善。10年10月から成牛にもビタコーゲンを給与することにした。
植島さんは「ふんの臭いが軽減し、たい肥の発酵が良くなった。特に、一昨年の冬は良いたい肥ができた。たい肥作りの問題は冬場の発酵で、ビタコーゲンを使う前はなかなか発酵しなかった。だから、撹拌したたい肥をもう一度戻し、発酵させていた」と冬場の発酵促進を実感した。
また、植島牧場では、4産、5産の牛が産後7〜10日で起立不能になることがあった。「ビタコーゲンを給与し始めてからは、その割合が減り、分娩後の立ち上がりに効果があった。また、夏場の食い込みも良くなった」と話すように、牛の健康面にも効果が現れた。
植島牧場のたい肥販売は、牧場の近くにある肥料販売会社から紹介され、山鹿市のブドウ農家に販売したのが始まり。それから徐々に販路が拡大。たい肥を大量に使うアスパラガス農家への販売が多く、大分県のブルーベリー農家に販売することもある。
植島さんは「今では、携帯電話に知らない番号からかかってくるくらい」と言うほど評判が良い。堆肥の注文が入ると、自らダンプを運転して販売。植島牧場に取りに来る場合は、軽トラック1台500円で販売している。「ある地域に一回販売すると、そこから拡がる。毎年、前の年よりも良いたい肥を作ることを意識している」と笑顔で話した。
良質なたい肥作りのコツについて植島さんは「機械は毎日回さない。例えば、2日回したら2日止める。そうすると、放線菌が表面に付く。そのたい肥を畑に入れると、病害虫を駆除するから、良質なたい肥として評価されている」と話してくれた。
熊本県山鹿市の牛嶋満紀牧場(鹿本酪農協所属)は、乳房炎罹患牛が少なく、乳質は県内でトップクラスを誇る。経営規模は、経産牛100頭、育成牛65頭で、1頭当たり乳量1万キロを超える。牛舎作業は牛嶋さんと従業員2名で行う。飼料はイタリアン9ヘクタール、デントコーン12ヘクタール(二期作)、WCS7ヘクタールのほか、稲わら5ヘクタール。ふん尿は撹拌した後、8割はイタリアンとデントコーン畑に撒き、2割は耕畜連携で無償提供している。改良は個体能力重視。能力の高い牛にはホルスタイン、残りはF1を生産する。
牛嶋さんは20歳で就農。当時は鹿本町(現山鹿市)の自宅敷地内の牛舎で12頭を飼養していた。そして、25歳の時に当時は畑として使っていた土地に50頭規模の牛舎を建設。その後も規模拡大を進め、50頭規模の牛舎をもう一棟建設し、現在の100頭牛舎が完成した。
牛嶋さんは軟便を改善するために12年7月からビタコーゲンを使い始めた。「軟便だと搾乳中にパーラーが汚れ、それを拭くのが大変だった。そのため、ある程度固いふんにしたかった。実際に使ってみると、ふんの締りが良くなった」と整腸作用を実感。衛生管理に特に気を使う牛嶋さんは、その効果を評価した。
さらに、「ビタコーゲンを給与し始めてから乳房炎の発生が減少した。おかげで、毎日の作業時間短縮につながった。長期間、まったく乳房炎が発生しない時期もあった」とし、それまでの30日間を大幅に超えるなど、整腸作用のほかにも効果があった。高泌乳牛群のため、ピーク時には1日1頭当たり300グラム以上給与している。
牛嶋牧場は牛舎周辺の環境に様々な工夫を凝らす。「牛舎内の温度を下げたいけど、湿度が高くなるのは好きではない」と話す牛嶋さんは、その日の気温と湿度に合わせ、細霧装置のタイマーを短い間隔で噴霧するよう設定。屋根に寒冷紗を張るほか、牛舎通路部分の扇風機の角度を変えたり、風が上方に逃げないように扇風機の上部にフードを付けて効率良く風を送る(写真)。また、ベッドの上の扇風機は、敷料が飛ばないように角度を微妙に変えるなど、万全の暑熱対策を講じる。
また、普段から乳質に気を配り、パーラーで使うお湯の温度を上げるため、ボイラーから電気温水器に変えた。
今後について牛嶋さんは「牛舎が手狭になってきたから、頭数を増やさずに個体能力を上げる。その上で、乳房炎や疾病を防ぐ。いくら頭数が多くても、乳房炎が多ければ搾乳に時間がかかってしまう。その中で経営をトータルで考えた時、ビタコーゲンは下痢や乳房炎、ストレスの予防に必要なもの。昨年の夏は特に暑かったから乳量は下がったが、健康状態は良かった。その効果もあったと感じている」と話した。