VOL.177 [デーリィマン誌 2015年6月号]
ししゃも漁で全国的に知られる胆振管内むかわ町。襟裳岬に通じる国道235号線沿いに位置する同町洋光の牧場、(有)ファームクリエイトを訪問した。代表は2代目の中田賢大さん(27)。創始者の父・次(やどる)さん(57)から今年1月、バトンタッチされた。(一社)北海道酪農協会東胆支部長として地域の酪農振興にも尽力している次さんは、賢大さんが30歳になるのをめどに牧場経営を引き渡す考えだった。しかし「自分は中学生の時から家業に従事してきたので、就労年数からいえばもう定年だ」と、予定より早めの経営移譲となった。
牧場の始まりは賢大さんの曽祖父にさかのぼる。当初は軽種馬の生産で生計を立てていたが、祖父が家業を継がず早くから家業を手伝っていた次さんが一世代を飛び越し、若くして家業を引き継いだ。次さんのそうした経験が、早々の経営委譲へとつながった。
法人化は平成2年。当時は軽種馬生産と酪農の複合経営だったが、徐々に乳牛の飼養割合を増やし、5年に45頭つなぎ牛舎を新築したのを機に酪農専業となった。その後、本格的に増頭を進め、9年にへリンボーンパーラ(8頭ダブル)、TMRミキサ、フリーストール牛舎(150床)などの施設を整え、飼養形態をつなぎ飼いから放し飼いへ移行した。
現在の経営規模は耕地面積60ヘクタール(うち借地50=採草地42 、トウモロコシ18)、乳牛総飼養数150頭(うち経産牛100)のほか黒毛和種繁殖牛4頭、黒毛肥育素牛2頭、F13頭を飼養する。1頭当たり平均年間乳量は7,700キロ、乳脂率3.8%、乳タンパク質率3.2%、無脂固形分率8.6%で、26年の出荷乳量は750トン。
家族は、父と母の千恵さん(57)、妻・友香さん(27)、2人の兄と3人の姉妹の9人。長兄と3姉妹は既に独立し、牧場は両親と賢大さん、次兄の大輝さん(32)のほか、4人の従業員(搾乳担当者2人、給餌などの担当者2人)の計8人で切り盛りしている。
賢大さんは、地元に近い北海道苫小牧工業高校から(学)八紘学園北海道農業専門学校に進んだ。家畜人工授精師の資格を取り、その後、家畜受精卵移植師の免許も取得した。現在、自分の牧場はもとより4戸の牧場の人工授精を年間400頭ほど行っている。
ファームクリエイトの牛群管理の大きな特徴の一つは群分け。まず哺乳・育成牛を3群に分け、旧牛舎などを利用してそれぞれ専用の牛舎で飼養する。新生子牛を分娩後3日まで初乳を与えた後、哺乳ロボットがある第1群牛舎で3カ月齢まで哺育し、その後、7カ月齢まで第2群牛舎で育成し、妊娠確認後の5〜6ヵ月までを第3群牛舎で飼養する。またフリーストールも6区に分け、経産牛などを群分けして飼養する。1区は泌乳最盛期牛群で高タンパク質、高エネルギーの飼料を給与、2区はダイエツトが必要な搾乳牛群、3区は乾乳牛と初妊の妊娠後期牛群、4区は分娩直後と要治療牛群、5区は黒毛和種繁殖牛と肥育素牛(もとうし)、6区は分娩室で、それぞれの牛群の状況に合わせてすぐに対処できるように管理されている。
きめ細かな牛群管理を行っているだけにサプリメント飼料にも関心が高く微生物資材もいろいろ試した経緯がある。
ビタコーゲンを黒毛和種に、乳牛には他社の微生物資材を与えてきたが、24年の冬に牛群に風邪がまん延し、肺炎による事故が多発した。そうした状況の中、ビタコーゲンの営業担当者から「ビタコーゲンは消化を促進させ、健康維持が図られ乳牛の体質改善にも効果が期待できる」と乳牛へのビタコーゲン給与を勧められた。25年1月にそれまで使っていた他社製品の微生物資材をビタコーゲンに切り替えて給与を始めた。
給与後、便の締りが良くなり軟便が解消されたことを実感した賢大さん。未消化のトウモロコシがほとんど見られなくなり、さらに牛舎内のアンモニア臭も気にならなくなった。「呼吸器の疾病はアンモニア臭に起因することが多いと聞くが、ビタコーゲンを給与してから呼吸器疾患はなくなった。また、餌の食い込みも良くなり消化器系の疾患も激減、第四胃変位もほとんど発症しなくなった」と、賢大さんはビタコーゲンの効果に満足する。
ビタコーゲンは、搾乳牛1日1頭当たり150グラムをTMRに混ぜて朝一回給与している。「搾乳牛に与えた残りの餌を育成牛に与えてから、育成牛の餌の食い込みが良くなり下痢がほとんどなくなった。毛づやも良くなり増体が促進された。これもビタコーゲン効果と感じている。今後は乾乳牛への給与も予定している。今ではビタコーゲンなしの飼養管理は想像がつかないほど。わが家の牛群の健康維持にビタコーゲンは欠かせない」とビタコーゲンに大きな期待を寄せる賢大さんだ。