VOL.178 [デーリィマン誌 2015年11月号]
サロマ湖の東部に位置する北見市常呂町の大広牧場を訪問した。経営主は酪農3代目となる大広康己さん(41)。
今年の5月に亡くなった2代目の父・晃(享年89)さんと母・美智子(81) さんの長男。5人きょうだいの末っ子で、両親はもちろん4人の姉からも牧場の跡取りとして早くから期待されていた。小さいときから牛舎に出入りし、高校を卒業して酪農学園文理科短期大学(当時)に進学。卒業と同時に実家で就農した。酪農へ進む道に、迷いは全くなかった。両親が高齢だったこともあり、26歳で牧場経営を引き継いだ。就農直後から現在に至るまで給餌から搾乳、分娩までを1人でこなしている。
牧場は北見市大正地区で農業と畜産を営んでいた康己さんの祖父が常呂に移り住んで始めた。現在の経営規模は耕地面積32ヘクタール(うち草地22、トウモロコシ10)、乳牛総数72頭(うち経産牛42)をつなぎ飼い方式で飼養する。1頭当たりの平均年間乳量は1万0,971キロ、乳脂率3.7%、乳タンパク質率3.6%、無脂固形分率9.1%で、平成26年の出荷乳量は450トン。康己さんが経営を受け継いだ当時は搾乳牛32頭で、その後最大46頭まで増やしたが、高品質乳を維持する目的で現在は40頭前後に抑えている。
父の晃さんが糞尿の臭いが軽減されると周囲の酪農家から聞いて使い始めたのがビタコーゲン。「自分が子どものころから、ビタコーゲンが牛舎にあった」と話す康己さんも、ビタコーゲンを使用して20年と付き合いは長い。だが、長く継続使用していたがゆえに、使用前と使用後の変化を知る機会がなく、効果を実感できず給与を一時中止したことがあった。ところが、「中止した直後から糞尿の臭いがきつくなり、慌てて再開したら臭いが収まった。それからはやめることを考えなくなった」と笑いながら話す。
ビタコーゲンには、牛の腸管内バランスを改善するために自然界から採取した生きた有効微生物(酵母菌・細菌・糸状菌)が多く含まれる。牛に給与することで、糞の臭いを減少させながら、糞に微生物群の一部が移行して堆肥の発酵を促進させる。
糞尿の臭いを気にするのにはもう一つ理由があった。早くからこだわりを持って注力している耕畜連携のためだ。康己さんは20年以上前から近隣の畑作農家との間で堆肥と敷ワラの交換を行っている。良質堆肥を畑作農家に提供し、たくさんの敷ワラを譲り受ける。畑作農家が求める良い堆肥とは、完熟発酵堆肥であることと臭いが抑えられていることが条件。どちらの条件も満たす堆肥づくりにビタコーゲンは欠かせないという。「臭いも少なく、良い堆肥だと畑作農家から喜ばれる。こちらも敷ワラの調達に困らないので、思う存分、牛に使ってあげられる。結果、牛の健康も維持されて高成績にもつながる」と康己さん。もちろん堆肥は自分の耕地にも投入しており、トウモロコシ・牧草ともに収穫量は上々で、特に牧草は売却できるほど。
ビタコーゲンは、1日1頭当たり100〜150グラムを3回に分け飼料に混ぜて与える。ほかの飼料添加材もいろいろ試しているが、ビタコーゲンだけは常に与えている。給与回数が増えるとその分手間がかかるが、それを負担とは感じていない。経産、未経産牛に関わらず全頭に与えている。自分の牧場で生まれた牛は成績結果を知るためにも最後まで自分のところで育てたいと考えており、育成段階でも与えるようにしている。
1人で作業の全てをこなすのは、苦労も多いのではと尋ねると、「就農当時からのことなので、苦労と感じたことはないですね」。今日まで目立った病気もなく、10年以上前から1頭当たり平均年間乳量は1万1,000キロ前後を維持する。「特別なことは何もしていない。牛が健康だからこその結果。牛を健康にしてくれているのがビタコーゲンかもしれないですね」と、ビタコーゲンに信頼を寄せる康己さん。今後については「今の成績を維持して、乳質を落とさないこと」。これが継続できれば、酪農を取り巻く環境の変化にも対応できると考えている。