ユーザー訪問

VOL.180 [デーリィマン誌 2016年6月号]

乳牛の総体的なコンディション維持にビタコーゲン!

浦部雄一 牧場北海道野付郡別海町別海180-13 TEL0152-75-3818

 北海道の東部に位置し生乳生産量日本一として知られる根室管内別海町で酪農を営む浦部牧場を訪問した。代表の浦部雄一さん(38)は、2年前に父・戸良夫(とらお)さん(66)から経営を引き継いだ酪農3代目で、妻・真理子さん(38)と長女・青(あお)さん(3)、戸良夫さんと母・多恵子さん(63)の5人で暮らしている。

 雄一さんは高校卒業して地元の建設関係の会社に就職したが、27歳になって両親の年齢を考慮して「そろそろ牧場を手伝わなければ」と考え勤めていた会社を退職して、実家の牧場を手伝うようになった。しかし、それまで牧場の仕事に関らずに過ごしてきたため酪農に関する知識はほとんどなく、いざ始めてみると会社勤めとはまるで違う生活スタイルに戸惑いの連続だった。就農から3年ほどは今後の自分の身の振り方に迷いを感じていたが、周りの人たちに支えられながら仕事をする過程で迷いは消えていった。雄一さんは「つらいと感じる時期もあったが、人との出会いに恵まれた。おかげで今は順調で楽しみながら仕事をしている」と周囲の人たちへの感謝の言葉を口にする。

牛舎全景

木造牛舎でトラブル軽減

 牧場は、雄一さんの祖父が別海町内の現在地とは異なる場所で60年前に立ち上げた。その後を2代目の戸良夫さんが引き継ぎ現在地に移転した。当時はまだ珍しいフリーストール牛舎と4頭ダブルのパーラをいち早く導入した。現在の経営規模は、借地を含めた採草地が120ヘクタール、放牧地50ヘクタール、乳牛総数240頭(うち経産牛130)を飼養し、2015年の総出荷乳量は1,100トン。育成牛の管理もほぼ自分で行うが、夏場は町営牧場に預託している。2年半前に木造のフリーストール牛舎やパラレルパーラ(8頭ダブル)などに施設を一新した。木造牛舎は地元の建設会社の施工によるもので、根室振興局主催の見学会が行われるなど今でも酪農関係者が頻繁に視察に訪れる。木造牛舎について雄一さんは、「結露がないし、冬は暖かくて糞や水槽の水が凍らないので、トラブルが軽減され、それが乳牛のコンディション維持につながっている」と話す。そのほか飼養管理ソフトを導入して乳牛のデータを管理している。情報を数値化することで、それまで見逃していた部分が見えるようになり繁殖成績が向上したという。放牧飼養は乳量を増やすよりも乳牛のコンディション維持が重要との考えから。「放牧は乳牛が長持ちするし、より多く飼養できる。体細胞数も抑えられ、乳房炎の発生も少ないし、作業も比較的楽」と雄一さん。乳脂率は年間平均4%で、夏場でも3.97~3.98%を維持する。ビートパルプの給与や、夜間にグラスサイレージを与えるなど乳脂率低下を抑える工夫をしている。

前列右から浦部雄一さん、従業員の阿倍さん、父戸良夫さん、後列右から北海道オリオン(株)の中谷さん、母多恵子さん

ビタコーゲンで乳牛のコンディションが向上

 ビタコーゲンを使い始めたのは、放牧牛に軟便が見られるようになったのがきっかけ。もともとビタコーゲンについては良い評判を耳にしていたこともあり、営業担当者に相談したところ、軟便改善に効果的と勧められ、昨年6月から給与を始めた。当初は乾乳牛のみに与えていたが効果を実感し、現在は搾乳t牛にも与えている。給与を開始して間もなく1年が経過するが、軟便の改善以外にも糞尿の臭いの抑制や食欲増進などの効果が表れている。糞尿の臭い抑制対策としての効果は想定外だったが、木造牛舎を訪れた見学者が、「牛舎内の糞尿の臭いがほとんどしない」と感想を口にするのを聞いて、あらためてその効果を実感したという。

 ビタコーゲンは自然界から採取した生きた有効微生物(酵母菌・細菌・糸状菌)を多く含んでおり、乳牛のルーメンバランスを改善する働きがあり、消化を促進させてトータル的な乳牛のコンディション維持が図られる。ビタコーゲンは1日1袋、TMRに混ぜて朝1回給与する。雄一さんは「ビタコーゲンを与えてから餌の食い込みが向上し、毛づやも良くなった」と乳牛のコンディションが総体的に上がったと感じている。また、「コンディションが良いので、それを維持するために現在使っているものはやめられない」と効果の継続に期待を寄せる。

 両親の負担を軽減するために今年から初めて従業員を1人雇用した。施設・設備については増頭にも対応できる設計となっているが、規模拡大は無理をしないで時々の状況を見ながら判断する。「個体乳量を増やすよりも、乳牛のコンディション維持に努めて長く飼養し、トータル的な経費を抑える。この考え方は昔から、そしてこれからも変わらない」と雄一さん。目指しているのは「家族みんなが時間や環境にゆとりを持てる」経営。それを支える乳牛のコンディション維持に欠かせないビタコーゲンの役割は大きい。

  • ビタコーゲンは1日1袋をTMRに混ぜて給与する
  • 木造の牛舎には多くの見学者が訪れる
  • 木造牛舎新築に合わせ8頭ダブルのパラレルパーラを導入
  • 哺乳用に移行乳を加熱処理するパスチャライザー