ユーザー訪問

VOL.182 [デーリィマン誌 2017年6月号]

乳牛のストレス緩和に安心感のビタコーゲン!

(同)井深ファーム 北海道白糠郡白糠町和天別931-5 TEL01547-2-3935/(同)白糠F-SEED 北海道白糠郡白糠町茶路基線74-1 TEL01547-2-5060

弟の参加を機にフリーストール牛舎新築

 道東農業の拠点、帯広市から東へ約90kmの距離に位置し、飛び地となった釧路市に東西を挟まれている釧路管内白糠町。町内鍛高(たんたか)地区はシソの産地として知られ、焼酎や炭酸飲料などに広く利用されている。また広大な土地を利用した酪農も盛んで、新鮮な牛乳からつくられるチーズは町の特産品の1つとなっている。町内和天別の合同会社井深ファームを訪問した。

 代表の井深洋平さん(37)は5年前に牧場を法人化した際、父・修さん(65)から経営を引き継いだ。現在は井深さんと修さん、妻・綾華さん(31)、母・きく子さん(65)、弟・祐樹さん(34)と祐樹さんの妻・加奈さん(34)、そして従業員1人とパート2人で牧場を運営している。洋平さんは幼い頃から牧場を継ぎたいと考え、高校卒業して北海道立農業大学校(十勝管内本別町)へ進学、卒業と同時に就農した。牧場は1980年、修さんが32頭で本格的に搾乳を開始。4年前、会社勤めをしていた弟の祐樹さんが牧場経営に加わったのを機に、200牛床のフリーストール牛舎を新築した。現在の経営規模は、耕地面積が70ha(うち牧草60、トウモロコシ10)、乳牛総飼養数は410頭(うち経産牛200)、搾乳施設には16頭ダブルのミルキングパーラを導入し、個体当たり平均年間乳量9,000kg、年間の総出荷乳量は1,900t。

町内13戸の酪農家でTMRセンター設立

 牧場の給与飼料は、井深さん自身も運営に携わる町内のTMRセンター・(同)白糠F−SEEDから全てを調達している。センターが設立されたのは7年前。畜産クラスター事業の追い風もあり、現在の代表でもある五十嵐政敏さん(54)が農協(JAくしろ丹頂)を通じて町内の全酪農家に参加を呼び掛け、最終的に集まった13戸の構成員で立ち上げた。井深さんが話を受けた当時は、64床の牛舎で搾乳牛82頭を入れ替え搾乳していた。祐樹さんが牧場経営に加わることが決まり、規模拡大を考えていたタイミングでの話とあって、「TMRセンターに加われば200頭搾れる」と参加を決断した。

 井深さんは現在、牧場の代表に加え同センター飼料部長の肩書きも持つ。センターでの作業は外部委託している餌の調製以外、構成員が自家牧場の作業と並行して行っている。井深さんは「構成員の負担を減らすためにも、外部委託できる部分を増やしたい」と話す。

ビタコーゲンを配合したTMRがセンターから配送される
左から祐樹さん、井深洋平さん、(株)エコ・アグリの瀬尾さん、(株)セイワの奥泉さん

暑熱対策としてのビタコーゲン

 同センターがビタコーゲンを導入したのは、夏季におけるTMRの暑熱対策がきっかけだった。導入前は別の添加剤を使用していたがTMRの熱が大幅に下降した後、再び急激に上昇するのが悩みの種だった。他の構成員の勧めもありビタコーゲンに替えてみたところ、極端な下降はなく一定の温度で安定した。飼料を与えた乳牛にも変化が見られるようになった。食い込みが良くなり、やや軟便傾向にあった糞の性状も改善された。しかし、外気温が下がる秋から半年ほどTMRへのビタコーゲンの配合をやめたところ再び軟便傾向に。

「暑熱対策を目的に配合していたので、乳牛の体調改善がビタコーゲンによるものとは考えていなかった」と井深さん。ほかの構成員の牧場でも同様の症状が見られたことから協議の末、ビタコーゲンの通年使用を決め、配合を再開すると糞の状態は改善された。

ビタコーゲンで
バンカー切り替え時のストレスを緩和


 センターのTMRは経産牛用、乾乳牛用、育成牛用と分けて、それぞれに適した量のビタコーゲンを配合している。また、井深さんは自家牧場用にセンターのバンカーサイロが切り替わるタイミングでも配合率を変えている。「同じ1番草でもバンカーサイロが変わると水分量も変化する。餌の変化は乳牛にストレスを与えるので乳量が減少し、乳房炎も増えたりする」。井深さんはこの対策として、バンカー切り替え時にビタコーゲンを多めに配合し、乳牛のストレス緩和に努めている。ビタコーゲン給与後は、切り替え時に見られた症状も改善され、「栄養が効率良く吸収されているからか、毛艶も良くなり乳量も増え、何より繁殖成績が良くなった」と、ビタコーゲンの効果を改めて実感している。

 町には現在、育成牧場がなく、近隣市町村の育成牧場を利用せざるを得ない。そのため井深さんは将来、センター構成員以外の牧場からも育成牛を預かれるような育成牧場を町内につくりたいと考えている。「育成牛の管理を外部に依頼し、その分を搾乳に専念することで400頭搾ることも可能になる」と見込む。さらなる目標達成のためにもビタコーゲンは欠かせないパートナーとなりそうだ。

  • 井深ファームの牛舎外観
  • TMRセンター(合)白糠F-SEED