VOL.184 [デーリィマン誌 2018年6月号]
北海道釧路管内の西部に位置する白糠町。釧路市中心部からの距離は約30㎞で、東西を飛び地となった同市に挟まれている。産業は林業、漁業ほか、酪農も盛んで、新鮮な原料乳からつくられるチーズは町の特産品の1つ。
今回は同町茶路の水野牧場を訪問した。経営主の牧場3代目の水野一巳さん(41)は、6年前に父・茂光さん(70)から経営を引き継いだ。水野さんと妻・メリアンさん(34)、長男・真嗣くん(4)、次男・薫くん(3)、3男・友貴くん(1)、そして茂光さん幸美さん(64)夫妻の7人暮らし。実習生も1人受け入れている。水野さんは酪農学園大学(北海道・江別市)を卒業と同時に実家で就農。
牧場は祖父が地元の郵便局員として働く傍ら、乳牛を数頭飼養したのが始まり。茂光さんの代から本格的に酪農に取り組み、水野さんが生まれた年に40頭牛舎を建てた。しかし8年前、この牧場地に道東自動車道・白糠インターチェンジが建設されることになり、現在の地に移転。これを機に規模拡大し80牛床の牛舎を新築した。経営規模は、耕地面積が78ha(牧草68、トウモロコシ10)、乳牛総数120頭(うち経産牛80)をつなぎ飼い方式で飼養する。個体当たりの平均年間乳量は9,600㎏、昨年の総出荷乳量は650t、乳脂率4.04%、乳タンパク質率3.23%。育成牛は6カ月以上を鶴居村(阿寒郡)の幌呂受託育成牧場に預けている。
給与飼料は、水野さん自身も運営に携わる町内のTMRセンター・(同)白糠F−SEEDから全てを調達している。同センターは8年前、町内の酪農家13戸を構成員として設立された。水野さんが運営参加の打診を受けた時、牧場では自給飼料で賄っていたので悩んだが、「万が一、自分に何か起こった時でも飼料を調達できる。また、今まで破棄していた余った牧草も無駄にならなくなる」と考え、参加を決断した。現在、同センター構成員として、総務と草地・収穫管理を担当している。
水野牧場では、茂光さんの代からビタコーゲンを使用していた。主に給餌を担当していた幸美さんが、飼料の食い込み不足解消のために導入したのが始まり。水野さんの代になってからもしばらく給与を続けていたが、コスト削減のために一時やめたことがあった。すると、軟便の症状が出始め、飼料の食い込み不足も目立ち始めた。「食い込みが悪くなると同時に乳量も落ちてきた。理由はビタコーゲンをやめたから。それ以外は環境も何も変えていないから、原因はそれしか考えられない」。ビタコーゲンの給与を再開すると、軟便の症状は消え、食い込み不足もすぐに解消された。
センターから配送されてくるTMRには、既に規定量のビタコーゲンが含まれている。水野牧場では、このTMRにさらにビタコーゲンを加えて乳牛に給与している。水野さんはその理由を「食い込み量が増えるし、残餌がなくなるのも助かる」と話す。分娩直後や食い込みが落ちている乳牛にはより増やして与えており、「個々の牛の状態を見て給与できるのが、つなぎ飼いならではのメリット」と水野さん。また、外気温が35℃近くになる夏場でも乳量が落ちることがないことから、夏バテ対策としての効果も実感している様子だ。
水野さんは今後について、「飼料コストを考えると、乳量をさらに増やさなければならない。いずれは頭数も増やして、搾乳牛を80頭確保し、育成牛と合わせて140頭が目標」と話す。牛群の食い込み不足は乳量の減少に直結する。食い込み不足解消に欠かすことのできないビタコーゲンとはこれからも長い付き合いになりそうだ。