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VOL.188 [全酪新報 2019年12月1日]

高い嗜好性で夏バテ防止 臭気対策にも大きな効果

大森牧場 北海道根室市

 北海道根室市の大森牧場(大森誠代表取締役・47歳)は、後継牛を全頭自家生産・自家育成で確保。特に力を注いでいる子牛の飼養管理は妻の陽子さん(43歳)が担当している。大森さんは「子牛の飼養管理に注力しているのは、牛の体作りの基礎は子牛の飼養管理で決まるから。子牛をしっかり観察し、個体ごとの状態に合わせて適切に対応しているため、牛の損耗などで苦労することは少ない」と語った。

 大森牧場は大森さんと陽子さんの家族経営だが、夕方の作業時には従業員1名が搾乳ロボットの洗浄などを担当している。大森さんは89年、高校卒業と同時に就農。当時はつなぎ牛舎で総飼養頭数は100頭ほどで、父親の元で牧場作業を学びながら、近隣の酪農家に出向き、酪農ヘルパーの仕事をしながら経営や技術の視野を広げていった。

 大森さんは「酪農は自分のやり方次第。だから自己責任で完結する。頑張ればその分返してくれるし、そこが魅力でもある。今は酪農を続けてきて満足している」と思いを明かした。

 しかし、そんな大森さんにも苦労があった。就農して5年程経った頃。その年の夏は北海道とは思えぬ猛暑で、搾乳牛はみなバテてしまい、食い込みが悪くなった。当然乳量は減少。体調を崩していく牛を見ながら「何とかしなければならない」と効果がありそうな添加剤等を色々と試してみたが、牛の状態に改善がみられず頭を抱えていた。

 そんなある日、㈱セイワの営業担当からビタコーゲンを勧められた。さっそく飼料に適量のビタコーゲンを混ぜて給与してみると、牛の食い込みが良くなり、乳量も徐々に回復していった。

 大森さんは「いろいろな製品を試してみたが、最も効果を実感できたのはビタコーゲンだった」と語った。その上で「使い続ける決め手になったのは、牛の嗜好性がとても良かったから。おかげで夏場でも乳量は落ちずに繁殖成績も向上した」とその効果に満足している。今では子牛の哺育期を除き、全てのステージでビタコーゲンを給与している。

 飼料はTMRセンターから供給されており、センターでは添加剤の混合など個々の農家の要望に応じたオーダーにも対応する。大森さんは購入したビタコーゲンを全てTMRセンターに預け、そこで規定量を混合してもらい、それを給与している。

ビタコーゲンを混合したTMR
粗飼料を食い込む搾乳牛。ビタコーゲンで嗜好性が上がった

良質堆肥を生産

 ビタコーゲンを使い始めると、いつの間にか牛舎の臭気が抑えられていることに気付いた。「もともと牛舎内の臭いは少なかったが、それがさらに抑えられ、ハエもいなくなった。何よりも堆肥の発酵が良くなり、高品質な堆肥生産が可能になった」と大森さんは牛の健康維持のほか、衛生面など目に見える様々な効果を実感した。

自家育成で規模拡大へ

 今年の7月には牧場施設を更新し、2台の搾乳ロボットを導入した。併せて繁殖管理用タグを搾乳牛と乾乳牛に装着。搾乳ロボットと連動しており、乳量や歩行数、反芻回数、脈拍など様々なデータがパソコンに送られる。そのデータをソフトが解析し、体調異変や発情などの注意喚起牛情報が一目でわかる仕組みを整えた。

 「それらの情報は毎日確認するが、あくまでも目安としての位置づけ。基本は情報をもとに牛をしっかり観察すること」と語り、データは簡単に情報の共有化を図るためのものと考えている。

 現在、頭のホルスタインを搾乳し、年間出荷乳量は700トンほど。大森さんは「これから搾乳牛を140頭程度まで増頭し、年間1500トン搾るのが目標。増頭を加味して1年後には850トンを目指したい」との方針で、今は規模拡大を視野に入れ、性判別精液を活用して徐々に後継牛を増頭している。

見せる酪農が理想

 大森さんが目指す牧場は、常に誰にでも見せられる開かれた牧場。「生産現場を見て生乳がどのように生産されているかを多くの人に知ってほしい。それを望む消費者もいる。消費者に酪農への理解を得るためにも、『今日はちょっと無理だ』ではなく『いつでも来てください。自由に見学できます』と言える状態が理想」と考えている。

 その上で「常に緊張感を持ちながら飼養環境や周辺環境の改善、衛生管理に努めなければならい。それが酪農への理解につながる」との思いを明かした。

  • 大森さん夫妻
  • 大森牧場の外観